エアキング/Air-Kingとは

目次

エアキングとは

エアキングの歴史

代表的なモデル一覧

第1世代(1940-1950年代)

第2世代(1957年-1989年)

第3世代(1989年-2000年代)

エアキングの魅力


エアキングとは

現存する最古のペットネーム

ロレックスの中でも「エアキング(Air-King)」というモデルは、非常に特別な意味を持つ存在です。

これは単なるモデル名ではなく、ブランドの中で最も古くから存在する「ペットネーム(愛称)」であり、1940年代から現在に至るまで受け継がれている伝統あるモデルです。

ロレックスは、多くのモデルに「サブマリーナー」や「エクスプローラー」といった個性的なペットネーム(モデル名)をつけていますが、「エアキング」がその始まりとも言える存在なのです。

この名前が誕生した背景には、当時の時代性やロレックスの企業精神が色濃く反映されています。

特に第二次世界大戦中に活躍したイギリス空軍のパイロットたちが、精度と信頼性を重視してロレックスの時計を自費で購入していたというエピソードが残っています。

そして、そんな英雄たちに敬意を込めて、「空の王者(Air-King)」と名付けられたのがこのモデルの始まりと言われています。

イギリス空軍 – イタリア バルカン半島 1942-1945年 イギリス空軍公式写真家、Lea T (Fg Off) 撮影

このことは、あまり日本では知られていないかと思います。

事実、今回、このトピックを書くにあたり、海外のサイトを色々と見てみるとこのようなエピソードがあり、初めて知ることがたくさんありました。

シンプルで無駄のないデザイン、使いやすいサイズ感、視認性の高さ。

どれをとっても「道具」としての腕時計の原点とも言えるような存在でありながら、その裏にあるストーリーは実に興味深い。

エアキングもまた、単なるタイムピースではなく、時代を超えて語り継がれる「物語」を身に着ける喜びを教えてくれるロレックスを代表するモデルの一つなのです。


エアキングの歴史

エアキングの歴史を辿ると1940年代まで遡ります。

当時、世界は第二次世界大戦(1939−1945年)の最中にあり、戦場では多くの兵士たちが過酷な環境下で命を懸けて戦っていました。

そんな中、ロレックスの創業者であるハンス・ウイルスドルフは、ある出来事に心を動かされます。

それは、イギリス空軍(RAF)のパイロットたちがロレックスの腕時計を自費で購入して使っていたという事実でした。

当時の軍用時計は支給品もありましたが、パイロットたちはより信頼性の高いロレックスを選んでいたというのです。

その背景には、ロレックスのオイスターケースによる防水性や、ムーブメントの高精度さが大きく影響していました。

ウイルスドルフは、このようなパイロットたちの勇気と誇りに感銘を受け、彼らを称える特別な時計を製作することを決意します。

また、当時台頭しつつあったジェット機愛好家層を意識して、「”エア”コレクション」を発表しました。

飛行士オーウェン・キャスカート・ジョーンズがオイスターの性能を賞賛する手紙を掲載したロレックスの広告

「エアコレクション」には、「エアキング」、「エアジャイアント」、「エアライオン」、「エアタイガー」といったモデルが展開されましたが、最終的に残ったのは「エアキング」のみでした。

こうして1945年に「エアキング」が誕生します。

この名前には「空の支配者」という意味が込められ、まさに空を駆ける英雄たちを称えるための時計として誕生したのです。

その後のエアキングは、1950年代のRef.5500に代表されるように、長きにわたってロレックスの定番モデルとして地位を確立します。

機能性とデザインのバランスが絶妙で、どの年代のモデルにも独自の魅力があります。

途中、廃盤にもなりかけましたが、数年の時を経て復活し、現在に至ります。

現行モデルも、初代の思想がしっかりと受け継がれており、時代を超えて愛されるモデルとなっています。


代表的なモデル一覧

ここではエアキングを代表するラインナップを、ヴィンテージモデルにフォーカスして紹介していきます。

第1世代 Ref.4925/4365/4499(1940-1950年代)

1940年代後半から1950年代前半に登場した初期型エアキングは、現在では非常に貴重な存在です。

Ref.4925は最も初期のモデルとされ、手巻きムーブメントを搭載。

文字盤のデザインには多くのバリエーションが存在するようです。

第1世代後期 Ref.6552

第1世代後期となるRef.6552は、後のRef.5500の設計に繋がる転換点となったモデルであり、34mmというサイズ感や全体のバランスにおいて「完成されたエアキング像」の礎となりました。

ちなみに、このモデルから自動巻ムーブメントが搭載されるようになりました。

これらのモデルは現存数が少なく、市場にも滅多に出てこないため、コレクターからは特別視されています。

第2世代 Ref.5500系(1957年-1989年)

エアキングの代名詞的存在が、このRef.5500です。

30年以上というロングセラーを記録し、今なお非常に多くのファンを持つモデルです。

ケース径34mmと小振りなサイズと軽さが相まって、腕につけた際の装着感は非常に良いです。

ムーブメントはCal.1520、またはCal.1530を搭載し、クロノメーター仕様ではないものの、信頼性と整備性に優れています。

ちなみに、Cal.1530を搭載したモデルは、ダイヤルに「SUPER PRECISION」表記、Cal.1520を搭載したモデルは「PRECISION」表記となっています。

カラーバリエーションも豊富で、シルバー、ブラック、ブルーといった定番カラーのほか、年式によっては、稀にホワイトやアイボリーも存在します。

型式もRef.5501やRef.5502、Ref.5504、Ref.5506など、多くの派生モデルが存在し、「Air-King」ロゴの表記も様々です。

ロングセラーモデルならではの、製造年による微細な違いがヴィンテージファンの心をくすぐります。

第3世代 Ref.14000系(1989年-2000年代)

Ref.14000ではムーブメントがCal.3000に刷新され、精度と安定性が向上しました。

また、風防がプラスチックからサファイアクリスタルへと進化し、傷に強くなりました。

全体的なデザインは5500を踏襲しつつも、より現代的な剛性へと進化しています。

ダイヤルデザインは、一般的なバーインデックス仕様はもちろん、ローマ数字、3時、6時、9時のアラビア数字仕様など、バリエーションが豊富です。

また、後継となるRef.14000MではムーブメントがCal.3130に変更され、さらなる耐久性と信頼性が高まりました。

ちなみに、このムーブメントはクロノメーター仕様ですが、ダイヤルは「PRECISION(プレシジョン)」の表記のままです。

(エアキングに搭載のCal.3000は、ノンクロノメーター仕様ですが、エクスプローラー(Ref.14270)に搭載のCal.3000は、クロノメーター仕様です。)

エアキング・デイト(Ref.5700/Ref.5701)

エアキング・デイトは、Ref.5700やRef.5701として知られています。

その名が示す通り、通常のエアキングにはない「日付表示」を備えた派生モデルとして誕生しました。

もともと製造数も少ないようで、市場でもなかなか見かけません。

デイト機能付きでも全体のデザインバランスが美しく保たれており、実用派ユーザーにもおすすめです。

数は少ないものの、バリエーションも意外と多く、自分のお気に入りの1本に出会う楽しみがあります。

カナディアンエクスプローラー

Ref.5500をベースにしながら、ダイヤルに「EXPLORER」の文字が記された珍しい個体が存在します。

これは正式には「エクスプローラー1」として流通していたわけではなく、一部の市場で限定的に販売されたレアモデル。

一説によれば、北米市場向けのモデルと言われており、通称「カナディアン・エクスプローラー」と呼ばれています。

こちらの個体は、3・6・9のアラビア数字インデックスが採用されており、視認性が高く、まさにエクスプローラーらしい顔つきですが、ツートン仕様の個体など、様々なダイヤルバリエーションが存在します。


エアキングの魅力

ノンデイトだからこその美しさ

エアキングの魅力の一つに、「ノンデイト仕様」であることが挙げられます(デイト付きもありますが・・・)。

日付表示がないことで、ダイヤルのデザインが左右対称でバランスよく、美しさが際立ちます。

これは視認性の面でも優れており、パッと見て、瞬間的に時間を読み取れることができます。

日付表示がないことで、当たり前ですが、日付変更の煩わしさがなく、日常の使い勝手もいいわけです。

スタイルを選ばない万能デザイン

クラシックでシンプルなデザインは、スーツにもカジュアルにも自然と馴染みます。

サイズ感も大きすぎず小さすぎず、日本人男性の手首に絶妙にフィットする34mm径という点も高評価のポイントです。

ロレックスというと豪華で主張が強い印象を持つ方もいますが、エアキングは控えめで、かつ上品です。

つまり、嫌味なく身に着けることができ、オンオフ問わず活躍してくれるため、最初のロレックスとしてもオススメです。

手の届く価格帯と安心の耐久性

現行モデルや人気の「サブマリーナー」、「デイトナ」と比べると、ヴィンテージのエアキングは比較的手頃な価格で入手可能です。

特にヴィンテージ・マーケットでは、Ref.5500やref.14000などは、比較的、質の良い個体がまだ多く残っており、ロレックスデビューにはうってつけ。

さらに、ロレックスならではの堅牢な作りと、シンプルな構造であるため、末永く愛用することが可能です。

ヴィンテージであっても、しっかり整備されていれば、当然ながら毎日お使いいただけます。


まとめ

エアキングは、一見するとシンプルで目立たない存在かもしれません。

しかし、その静かな佇まいの奥には、歴史的背景や思想、技術がしっかりと息づいています。

どの時代のモデルもそれぞれに魅力があり、自分だけのお気に入りを見つける楽しさもこのモデルの醍醐味です。

スイートロードでは、幅広くエアキングを取り揃えております。

どれも一点ものですので、気になるモデルがあればお早めにご相談ください。

あなたの日常に静かに寄り添い、日々の時間とともに味わいを深めてくれる一本。

それがエアキングです。

ぜひその魅力を、実際に手に取って感じてみてください。