シグマダイヤルとは

日頃からスイートロードの商品を眺めていると、主に70年代のロレックスやパテックフィリップといった、いわば高級時計と呼ばれるモデルの説明文に記載されている「シグマダイヤル」という言葉を目にしたことがあると思います。

シグマダイヤルとは、文字盤の色や仕上げ方法の名称ではなく、文字盤に配された特別な表記のことを指しており、今回はその「シグマダイヤル」について詳しく解説させていただきます。


目次

シグマダイヤルとは

シグマダイヤル誕生の理由

シグマダイヤルを採用していたブランド

シグマダイヤル誕生から廃止まで


シグマダイヤルとは

まず初めに、「シグマダイヤル」とは、文字盤6時位置(インデックスの外側)に「σ(シグマ:ギリシャ文字)」が記された文字盤のことを指しています。

「 σ T SWISS T σ 」

「 σ SWISS σ 」

モデルによって違いはありますが、共通して、6時位置(インデックスの外側)のSWISS表記の両側にσマークが配されており、このマークによって「文字盤のインデックスに金(ゴールド)が使われている」ということを示しています。

※ちなみに、「T」はトリチウム夜光を使用していることを表しています。


シグマダイヤル誕生の理由

シグマダイヤル誕生の歴史的背景

1969年12月にセイコーが発表した世界初のクォーツ腕時計「アストロン」から始まったクォーツショックにより、スイスとアメリカの機械式時計産業は大きな打撃を受けました。

そこで、スイスの機械式時計製造業界は、一般社団法人「金産業振興協会 APRIOR(l’Association pour la Promotion Industrielle de l’Or)」という団体を発足し、クォーツ時計に対抗するために、金(ゴールド)製のパーツを時計に使用するのを推進していきます。

「時計の本質的な価値を高める」ことで、機械式時計産業の再起を図ったのです。

そして1970年初頭、「商品がスイス産であり、金の使用管理に関するスイスの法定要件で定められた一定の基準までの純金を含み、申請者が定めた基準と品質を満たしていることを証明する」ということを意味する「シグママーク」を作り、これが、団体(APRIOR)に加盟するブランドの時計に刻まれていくことになります。

シグマダイヤルの付加価値

シグママークは、エンドユーザーや販売者、時計職人など、誰が見ても分かるように、文字盤の6時位置、裏蓋、ブレスレットに刻印されました。

ブランドによる品質の高さ、スイスクロノメーター認定による精度の高さ、さらに金を使用したことによる「本質的な価値の高さ」を時計に付加することで、ユーザーが完璧な満足感を味わえると考えたのです。


シグマダイヤルを採用していたブランド

パテックフィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ロレックス、IWC、オメガといった有名時計ブランドなど、常に5社〜9社ほどがAPRIORに加盟していたと言われています。

時計ブランド以外にも、スターン社やジンガー社などのダイヤルサプライヤーも加盟していたこともあり、商標登録以前の1970年頃に製造されたヴィンテージロレックスにも、シグママークの存在が確認できます。

なお、ロレックスに関しては1970年代の終わり頃にはシグママークの使用を止めており、それゆえコレクターの間でも希少性が高いポイントとして認知されています。

パテックフィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、IWCなどに関しては、2000年前後までシグマダイヤルが使用されていました。

シグマダイヤルが採用された主なモデル

■ロレックス

オイスターパーペチュアル/デイトジャスト/サンダーバード/デイトナ/カメレオン/チェリーニなど

■パテック・フィリップ

カラトラバ/ノーチラス/ゴールデンエリプスなど

■ヴァシュロン・コンスタンタン

オーヴァーシーズ/パーペチュアルカレンダー・ムーンフェイズなど

その他、オメガやIWC、ジラールペルゴ等の高級時計メーカーの一部モデルに採用されていました。

補足情報

ちなみに、「σ:シグマ」と言ってはいますが、厳密には「σ」をアレンジしたアイコンのようなシンボルを採用しています。

また、「シグマダイヤル」の他にも、海外では「APRIOR DIAL(アプリオリダイヤル)」とも呼ばれることがあります。


シグマダイヤル誕生から廃止まで

1970年初頭に誕生したシグマダイヤルですが、2007年のAPRIOR消滅により、現在は廃止されています。

シグマダイヤルの歴史年表

1970年初頭APRIORが発足され、シグママークを定義する。
1971年8月スイスにて商標登録される。
1972年7月米国特許庁に商標登録される。
1973年APRIORに加盟していた一部のブランドでシグママークを採用した時計が販売される。
2000年頃いくつかのブランドでシグママークが採用され続ける。
2007年APRIORが消滅。以降のモデルにはシグママークも廃止。

まとめ

今回はシグマダイヤルの付加価値や希少性をご説明させていただきましたが、同じ年式、同じ色の文字盤だったらシグマダイヤルの方が絶対に価値が高い!ということでは決してございません。

ダイヤルのコンディションやインデックス・針のデザインや仕様なども1本1本異なりますので、シグママークの意味を踏まえた上で、ぜひ自分好みの時計を見つけていただけたらと思います。