機械式腕時計はなぜ高価なのか?
皆さん、「機械式腕時計」について、こんなイメージを抱かれている方が多いのではないでしょうか。
「機械式腕時計って、なんで、あんなに高いの?」
確かに、機械式時計は総じて「高価」です。
比較的安価と言われるものでも十数万円、上は、数千万円、数億円なんてものも存在します。
というわけで、今回は「機械式時計がなぜ高価なのか?」という点について解説していきたいと思います。
機械式時計とは?
腕時計は、大きく「機械式腕時計」と「クオーツ式腕時計」の2つに分けることができます。
機械式腕時計とは、「ゼンマイのほどける力を動力として、時計を稼働させる腕時計」のことです。
一方、クオーツ式腕時計とは、「電池(電気)の力を動力として、時計を稼働させる腕時計」のことです。
・機械式腕時計 = ゼンマイのほどける力を動力として、時計を稼働させる腕時計
・クオーツ式腕時計 = 電池(電気)の力を動力として、時計を稼働させる腕時計
クオーツ式は、機械式腕時計に比べ、パーツ点数も少なく、各パーツも大量生産が可能で、安価に製造することができます。
そのため、最近は100円ショップや量販店で、1,000円以下で販売されているものも多数存在します。
それに対して、機械式腕時計は、パーツ点数も多く、各パーツ自体も精密で、生産に手間も時間も掛かり、それ故、そもそも安価に製造することが難しいのです。
【高価な理由1】機械式で製造に手間がかかる
一般的に機械式腕時計は、シンプルな構造のものでも約100ほどのパーツから構成されています。もちろん、クロノグラフやグランドコンプリケーション(超複雑時計)ともなれば、パーツ点数はもっと多くなります。また、それらの各パーツも、かなりの高い部品精度が求められます。
精密な歯車がいくつも折り重なって稼働している機械式腕時計ですので、1つでも不具合のあるパーツがあれば、時計の精度が保てなくなるのはもちろん、稼働しないことも想像に難しくはありません。そのため、たかが「ネジ1本」にしても、厳密な品質管理のもと、製造されているわけです。
ひいては、そのようなパーツが100もあるのであれば、必然的に製造に手間(お金・時間・人手)がかかり、高価にならざるを得ません。
その後の組み立て工程においても、専門の技術者がひとつひとつ手作業でパーツを組み上げ、稼働チェックはもちろん、品質チェックを行いながら、時間をかけて1つの腕時計を完成させます。
このような工程を経て、完成した機械式腕時計ですので、高価になるのは当然です。
【高価な理由2】製法や原材料を厳選している
機械式腕時計は、メンテナンスを行いながら、末永く使われるものであるため、時計自体の原材料にもこだわっています。
素材としての安定性(劣化しにくさ)を重視しているため、安価で加工が容易なプラスチック等は敬遠され、金属が主な材料として多く使われています。
金属の中でも、「ゴールド」や「プラチナ」などは、素材としての安定性も高く、変色やサビに強い素材です。その他にも、「チタン」や「セラミック」「カーボン」なども腕時計の外装素材やパーツに採用されています。
これらの素材は、ご存知の通り、素材自体も希少であり、また製造にコストもかかるため、非常に高価です。
また、一般的な腕時計でも用いられる「ステンレス」にしても、ロレックスなどは、耐久性の高い超高級ステンレス「904L」を採用するなど、最高級と言っても過言ではない素材を、おしげもなく腕時計の製造に採用しています。
機械式腕時計においては、見た目の美しさや華やかさも重要です。
そのため、各パーツや外装部品の仕上げ(装飾)にも大変こだわっています。
わかりやすいところで言えば、文字盤に宝石を散りばめたり、ベゼルにダイヤを埋め込むなど、外装パーツの仕上げにこだわるのはもちろん、内部のムーブメントの各パーツの角を面取りしたり、パーツ表面を磨いたり、規則性のある模様をつけたりと、目に見えない部分にも各メーカーのこだわりがふんだんに盛り込まれています。
このように、工芸品のような作り方をしている点も、機械式腕時計が高価になる理由の1つです。
【高価な理由3】ブランドの価格戦略
機械式腕時計は、先に説明したように、手間と時間をお金(総じてコスト)をかけて作られています。
単純に「モノ」として、最高級・最先端の技術と素材で作られているため、高価格に設定せざる得ないのです。
さらに、各ブランド(メーカー)の価値も価格に転嫁されています。
仮に、「ロレックスの時計」と、「ロレックスと同品質だが無名の時計」があった場合、人はどちらの時計を選ぶでしょうか?
デザインや見た目はもちろん、品質は同じなので、耐久性や精度など時計としての機能はどちらも同等と仮定します。
この場合、おそらく、多くの人が「ロレックスの時計」を選ぶことでしょう。
そこには、ブランドの価値があるからです。
ブランドの価値とは、そのブランドの歴史や理念、こだわり等であり、そこに共感する人は当該ブランドを支持(購入)します。
とはいえ、現代の消費者の目は肥えていますので、「ブランド価値」だけで、品質が伴わないブランドはいずれ淘汰されます。
そのような環境の中で、消費者の期待に応えた高品質な製品づくりを脈々と続けている老舗ブランドは、必然的に「ブランド価値」が高まっていきます。
このようにみていくと、機械式腕時計が高価な理由はご理解いただけたかと思います。
決して「価格が高いだけで、中身が伴わない」ものでは決してありません。
高価であるには、それなりの理由があるのです。
その理由を理解した上で、価格に納得した人だけが購入するのが機械式腕時計とも言えるでしょう。
これは、腕時計に限った話ではありません。
高級自動車や一流ブランドの鞄など、高級品やブランド品と言われているモノは、すべてこのような理由により、高価なのです。
銀座の一流のお寿司屋さんで寿司を食べるのと高いのも同じ理由です。
各高級腕時計ブランド(メーカー)は、決して、万人に時計を買ってほしいとは思っていないのです。
本当に各ブランドの腕時計の価値を理解してくれた人だけが買ってくれればよいと思っているのです。
そう考えると、昨今の現行品の入手のしにくさも、多少理解できるかもしれません。
このような言い方をすると、自分は一生、機械式腕時計は買えないと思う人がいるかもしれませんが、ご心配なく。
決してそんなことはありません。
そうです。
このような高級腕時計が手の届く価格で購入できるのが、ヴィンテージウォッチの世界なのです。
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