高級時計メーカー
「ロレックス」とは
ロレックス(ROLEX)は、1905年に創業した高級時計メーカーです。
スイス・ジュネーブに本社を構え、時計のムーブメントから時計本体まですべてを自社で一貫して製造できる数少ないマニュファクチュールメーカーです。
時計メーカーとしては、決して歴史の古いメーカーではありませんが、老若男女、世界中で誰もが憧れる、いつの時代も人々から注目されるのがロレックス。
今回はそんなロレックスについて解説していきます。
ロレックスの歴史
1905年、創立者であるハンス・ウイルスドルフ(ドイツ出身)が、24歳のときにロンドンに設立した時計専門商社(ウイルスドルフ&デイビス社)がはじまりです。
後発メーカーである「ロレックス」が、今となっては高級時計の代名詞といえるメーカーになったのは、ひとえに、創業者であるウイルスドルフの才覚の賜物であるのは明白です。
当初は主に、上品なレザーケースに入ったトラベルウォッチ(携帯用置時計)を販売していましたが、すでにウイルスドルフは、手首に着用する時計(つまり今の腕時計)の構想を描き始め「これからは腕時計がエレガントであるだけでなく、信頼性(実用性)も兼ね備えるものになる」と予見していたそうです。
ハンス・ウイルスドルフ 最大の発明
今でこそ、高級時計の代名詞ともいえる「ロレックス」ですが、そもそも、この「ロレックス」という言葉(名称)を創造した人こそが、ハンス・ウイルスドルフ自身と言われています。
朝、通勤途中の乗り合い馬車の中で「ROLEX/ロレックス」という言葉が思い浮かんだのだとか。「簡潔で覚えやすく、どこの国の言葉で読んでも同じ発音になり、かつ発音しやすい名称が良い」との考えのもと創造したそうです。
この名称自体には特定の意味はなく、むしろ名称としての音の響きや視覚的な印象を重視したとも言われています。
また、「ROLEX」という名称は5文字と短く、時計の文字盤やムーブメントに刻印しやすいという実用的な理由もあったとも言われています。
創造した真相は今となっては謎ですが、ウイルスドルフは1908年に「ロレックス」を商標登録しています。
今となっては、「ロレックス」という言葉を創造したこと自体が、ウイルスドルフの最大の発明、功績であったと言えるのではないでしょうか。
精度へのこだわり
腕時計の信頼性(実用性)を探求するウイルスドルフは、時計の精度に非常にこだわり、1910年に、ロレックスが世界で初めて、スイス・ビエンヌにあるスイスクロノメーター歩度公認検定局から腕時計の精度証明を受けることに成功しました。
これにより、時計として最も担保しなければいけない「時計の精度」という信頼を得ることになったのでした。
世界初の防水時計「オイスター」
次に、ウイルスドルフが取り掛かった信頼性を得るために取り組んだ課題は「時計をいかに埃や湿気から守るか」ということでした。
御存知の通り、時計内部に埃や湿気がケース内部に入ると、歯車の間に入り込んで時計の稼働を止めてしまったり、内部のパーツが酸化により錆びたりする恐れがあるため、時計にとって気密性を高めることは必ずクリアしなければならない課題の一つでした。
1922年に、時計全体を別の気密性の高いケースで覆うというアイデアのもと、ロレックスは「サブマリン」という時計を発表しました。
しかし、サブマリンは、時計を操作するためにいちいち外側のケースを開ける必要があり、実用性という点では少々、使い勝手の良くないものだったようです。
このような試行錯誤のもと、1926年に、ついに世界初となる防水腕時計を発表します。
ミドルケースにベゼル、バックケース、リューズを「ねじ込む構造」にすることにより、ケース自体の密閉性が確保され、時計の内部を埃や湿気から保護する画期的なものでした。
ウイルスドルフは「オイスター(牡蠣)のように、どんなに長い間水中にあっても機械や機能が損なわれない」という事実から、時計もケースも「オイスター/OYSTER」と名付けました。
これは時計製造の歴史において画期的な発明でした。
翌1927年には、この防水腕時計「ロレックス・オイスター」を着用したイギリス人女性がドーバー海峡を遠泳での横断に成功し、この時計の防水性が全世界に広く知られることになりました。
自動巻き機構「パーペチュアル」
次に、ウイルスドルフが取り組んだ課題は「リューズの操作をいかに少なくするか」ということでした。
先に開発した防水腕時計「オイスター」では防水性を担保したものの、手巻き式だったため、毎日、ねじ込み竜頭を開放し、ゼンマイを手巻きする必要がありました。
そのため、日々のリューズ操作による防水性(気密性)の低下や、リューズのねじ込み忘れによる度重なる不慮の事故により、防水腕時計「オイスター」にも関わらず、埃や湿気の侵入による時計の不具合がたびたび起き、ロレックスの信頼性を揺るがす事態になりかねないと懸念していたようです。
そのため、リューズ操作の不要な「自動巻き上げ機構」の開発は悲願だったのです。
そして、ついに、1931年、世界初の自動巻メカニズムを持つ、特許取得のパーペチュアルローターを開発しました。
そして、この自動巻き上げ機構を、ロレックスは「パーペチュアル/PERPETUAL」と名付けました。
デイトジャスト機構の誕生
デイトジャスト(DATEJUST)機構は、その名前の通り、時計の日付が瞬間的に切り替わる機構ことです。
1945年にロレックスが特許を取得し、同年、腕時計として発売されました。それまでの腕時計では、日付が徐々に変わるものが一般的でした。
しかし、このデイトジャスト機構は、日付が深夜0時に(多少の前後の誤差あり)正確に「パチッ」と瞬間的に切り替わるように設計されており、当時の時計業界において画期的なものでした。
ここに、ウイルスドルフの残した言葉があります。
「これはもう、時計科学の傑作であるとしか言いようがない。これまでの発見がすべて凝縮されている」
「これからは腕時計がエレガントであるだけでなく、信頼性(実用性)も兼ね備えるものになる」と確信していたウイルスドルフにとって、これまで追い求めてきた信頼性(「時計としての正確な精度」、「過酷な環境下であっても物怖じしない堅牢な時計本体」、「着用している限り動き続ける永続性」)をすべて具現化したものが完成したのでした。
プロフェッショナルモデルの誕生
その後、1950年代から1970年代にかけて、後のロレックス人気を牽引していく数々のプロフェッショナル・モデル(スポーツモデル)が次々と誕生していきます。
今まで培ってきたロレックスとしての信頼性をより確固たるものにするために、各分野のエキスパートやプロフェッショナルとパートナーシップを結びながら、様々な環境下においてより一層機能するモデルの開発に力を入れていきます。
そして、彼らからのフィードバックからさらなる機能をもった時計が生まれていったのです。
まさに、海の「サブマリーナ」、陸の「エクスプローラー」、空の「GMTマスター」、計測の「デイトナ」と現在においても大人気のモデルは、この頃から始まったのです。
その後も「永続的な卓越性」という概念のもと、ロレックスは、数々の新しい技術や素材、モデルを開発し、今なお、時計業界を牽引する人気ブランドとして君臨し続けています。
ロレックスの歴史年表
1905年 | ロレックスの前身「ウイルスドルフ&デイビス社」設立。時計の輸入と販売を始める。 |
---|---|
1908年 | どこの国の言葉で読んでも同じ発音になるように考えられた造語「ロレックス」を商標登録。スイスのラ・ショー=ド=フォンに事務所を開設。 |
1914年 | ロレックスの時計が、イギリスのキュー天文台で「A級証明」を取得。 |
1919年 | 本社をスイスのジュネーブに移転。 |
1926年 | 王冠のトレードマークを使い始める/捻じ込み式竜頭の特許を取得。オイスターケースを開発したオイスター社を買収し、防水技術の特許を申請。世界初の防水・防塵腕時計「オイスター」を発表。 |
1927年 | この年からダイアル、ケース、ムーブメントの全てに「ロレックス」の銘が入る。「ロレックス・オイスター」を着用したイギリス人女性:メルセデス・グライツが遠泳でドーバー海峡を横断。 |
1931年 | 自動巻き機構「パーペチュアル」を発表。 |
1945年 | デイトジャスト機構の特許を取得。日付表示機能を持つ世界初のカレンダー付き自動巻時計「デイトジャスト」を発表 |
1953年 | 高い防水性能を持つダイバーズウォッチ「サブマリーナ」を発表。また、同年「エクスプローラー」も発表。 |
1955年 | 2つのタイムゾーンを表示する「GMTマスター」を発表。 |
1956年 | 曜日をフルスペルで表示する機能を持つ世界初の腕時計「デイデイト」を発表。 耐磁機能に特化した「ミルガウス」を発表。放射線技師など特殊な環境下において業務を遂行する人のためのプロフェッショナルモデル。 |
1960年 | ロレックスの「ディープシー・スペシャル(試作モデル)」が、深海潜水艇「トリエステ号」の外側に取り付けられ、世界最深部(10,916 m/マリアナ海溝)到達を達成。 |
1963年 | モータースポーツ用に設計されたクロノグラフ「コスモグラフ デイトナ」を発表。 |
1967年 | 水深610mまでの防水機能をもったプロ仕様のダイバーズウォッチとして、ヘリウムエスケープバルブを搭載した「シードゥエラー」を発表。 |
1971年 | 冒険家や探検家向けに設計されたモデル「エクスプローラーII」を発表。 |
1972年 | クオーツムーブメントを搭載した「オイスタークォーツ」を発表。 |
1976年 | 「ロレックス・オイスター」の誕生50周年を記念して、世界をより良い場所にするため人類の知識を向上させ、文化遺産を守り、自然界の種とその生息地の保護に貢献する、独創的なプロジェクトに勇気と強い信念を持って取り組む個人を支援する「ロレックス賞」が設立される。 |
1983年 | 「GMTマスターⅡ」を発表。 |
1985年 | ステンレススチール製品にサテンフィニッシュを施し、耐腐食性のある904Lステンレススチールを採用。 |
1992年 | 高い防水性能を持つ「ヨットマスター」を発表。 |
2000年 | 「コスモグラフ デイトナ」に新しい自社製ムーブメント「キャリバー 4130」を導入。 |
2005年 | 「新素材セラクロムベゼル」を開発。一部のプロフェッショナルモデルに初めて搭載。最新の耐衝撃性技術を駆使した「パラクロム・ブルー」ヒゲゼンマイを開発。 |
2007年 | 回転ベゼル操作式のクロノグラフを搭載したセーリング競技(ヨット)に特化したモデル「ヨットマスターⅡ」を発表。 |
2008年 | 防水性能が3,900mを誇る「ディープシー」を発表。 |
2009年 | 従来のサイズ36mmから41mmにサイズアップした「デイトジャストⅡ」発表。 |
2012年 | 年次カレンダーとデュアルタイムゾーン表示を搭載した「スカイドゥエラー」を発表。 |
2013年 | フォーミュラー1(F1)とグローバルオフィシャルパートナー契約締結 |
2015年 | 新素材「エバーローズゴールド」を導入し、独自の合金であるロレゾール(ステンレスと金の組み合わせ)を強化。 |
2017年 | 全仏オープン(テニス)のプレミアムパートナーおよびオフィシャルタイムキーパー契約締結 |
2021年 | 全米プロゴルフ選手権のオフィシャルパートナーおよびオフィシャルタイムキーパー契約締結 |
2023年 | 時計販売店Bucherer社を傘下に入れる。 |
代表的なモデル一覧
ここでは、幅広いシリーズを展開するロレックスの魅力的な時計たちをヴィンテージモデルを中心に紹介していきます。
現行の人気モデルの源流こそが、ここで紹介するヴィンテージモデルであり、その時計の経てきた時間的、歴史的流れを感じつつも、今持って、時計としての実用に耐えうる程の品質を担保している実用品でもあります。
今持って実用できることがいかに素晴らしいことか、偉大なことか、身を持って体感できるのがヴィンテージ時計なのです。
サブマリーナ
「サブマリーナ」は回転ベゼルを備えた世界初の市販ダイバーズウォッチとして1953年に登場しました。
水中での使用に特化した設計で、当時100メートル(330フィート)の防水性能を誇りました。
回転ベゼルを回すことで、潜水経過時間を管理することができるプロフェッショナルモデルです。
後に開発されたダイバーズウォッチで「サブマリーナ」の影響を受けていないものないとまで言われるほど、ダイバーズウォッチとしての完成度が高いモデルです。
また、1964年公開の映画「007 ゴールドフィンガー」でショーン・コネリー演じるジェームズ・ボンドが白いタキシード姿に「サブマリーナ」を合わせたことで、より一層、多くの人にその名を知られるようになったのも事実です。
タキシードに「サブマリーナ」というコーディネートは、その後のサブマリーナ人気を裏付け、今なお根強い人気を誇っています。
また、ヴィンテージモデルは、深海での水圧に耐えられるよう風防が膨らんだドーム型のプラスチック風防が採用されており、見た目の形状からもプロフェッショナルモデルであることが見て取れます。
その後、1960年代に入ると潜水技術の発達により、ヘリウムの割合が高い特別な混合呼吸ガスを用いた飽和潜水という潜水方法が確立され、人はより長い時間、水中での作業が可能になりました。
それに伴い、時計においても時計内部に充満したヘリウムガスを減圧時に排出する必要性が生まれ、1967年にヘリウムガス排出バルブを装備した上位モデル「シードウェラー」が登場しました。
また、1969年には派生モデルとして、日付表示のついた「サブマリーナ・デイト(通称:赤サブ)」が登場するなど、プロフェッショナル・ダイバーズウォッチとしての地位を確固たるものにしていきました。
1971年には、フランスの海洋潜水専門会社コメックス(Comex)と正式にパートナーシップを結び、コメックス社のダイバーにロレックスの時計を装備させ、定期的に時計の性能についてフィードバックをもらうことで、時計の信頼性と機能性の向上に役立てていきました。
GMTマスター
1955年、かつて存在したアメリカの航空会社「パン・アメリカン航空(通称:パンナム航空)」の国際線パイロットや航空関係者用に誕生したのが「GMTマスター」の始まりです。
この頃になる旅客機は長距離飛行が可能となり、旅行者は乗り継ぎなしに大陸から大陸へ移動することが可能になりました。
当初は旅客機パイロット向けだった「GMTマスター」も、時代が経つにつれ、国際派のビジネスマンや一般旅行者からも支持されるようになっていきました。
GMTマスターの「GMT」とは、ロンドンの王立グリニッジ天文台での平均太陽時であるグリニッジ標準時(Greenwich Mean Time)を意味しています。
1884年より、グリニッジ子午線は世界の24タイムゾーン(時差)の基点となっているからです。
「GMTマスター」は、「24時間針」と昼と夜がひと目でわかる「青と赤の回転ベゼル」を組み合わせて、時差のある任意の2地点の時刻を時計の針を調整することなく、読みとることができるプロフェッショナルモデルです。
「GMTマスター」を愛用していた有名人としては、最も有名なのはキューバの革命家「チェ・ゲバラ」ではないでしょうか。
葉巻をくゆらせながら左手に「GMTマスター」を着用した写真に見覚えのある方も多いハズ。
また、ヴィンテージの「GMTマスター」において、重要な役割を果たしているのが象徴的な青と赤のベゼルです。
青と赤のベゼルは、通称「ペプシベゼル」と呼ばれ、ベゼルの経年具合や色の褪色具合で、同じモデルでも雰囲気が全く異なり、ヴィンテージならではの独特の魅力が味わえる唯一無二の存在です。
アイコニックながらも、理にかなった実用性の高いベゼルにロレックスの革新性を感じずにはいられません。
エクスプローラー
1953年5月29日にイギリスのエベレスト遠征隊に参加したエドモンド・ヒラリー卿とテンジン・ノルゲイがエベレスト登頂に成功した際に彼らが身につけていたのがロレックスの時計でした。
当時、ロレックスはエクスプローラーとしての正式なモデル名を持つ時計をまだリリースしておらず、実際に携行していた時計は「オイスター・パーペチュアル・クロノメーター」でした。
このエベレスト登頂成功を機に、ロレックスは「エクスプローラー」を発売しました。
モデル名が示す通り、過酷な環境でも耐えうる頑丈さと視認性の高さが特徴で、視認性を高めるため、12時位置には大きなトライアングル型のインデックスを配置し、その他、3時、6時、9時位置にはひと目で認知できるアラビア数字インデックスを配置しています。
ヴィンテージモデルにおいては、アラビア数字インデックスに丸みを帯びたフォントが採用されており、無骨な冒険用の時計ながらも朗らかな表情を醸し出しており、どこか温かみのある印象を受けます。
また、他のプロフェッショナルモデルと異なり、回転ベゼルなどもなく、ケースサイズが36ミリ径とスタンダードウォッチと同程度のサイズ感であり、シチュエーションを選ばす、都市でも自然環境下でも、どこでも使い勝手がよいのも人気の理由です。
シンプルでありながらも洗練されたデザインは、探検家のみならず、多くの一般の人々においても人気が高く、未だに愛され続けています。
1971年には24時間針やGMT機能を備えた「エクスプローラーⅡ」も発売されました。
洞窟探検など時間感覚が失われるような極限状況下や、北極・南極探検など、昼夜の区別が難しい過酷な環境下においても、時間を知ることができるように開発された究極のプロフェッショナルモデルといえます。
デイトナ
1963年に初めて発表された「デイトナ」は、当初は「コスモグラフ」の名で登場しました。
「デイトナ」は、特にモーターレースの世界に向けてデザインされ、プロフェッショナルのレーサーやエンスージアスト向けに作られました。
そのため、スピード計測が可能なタキメータースケール付きのベゼルが装着されています。
文字盤の色と反転色が採用されたインダイヤル、ベゼルに刻印されたタキメーターなど、従来のクロノグラフとは一線をかくしたレーシングテイストを全面に打ち出したプロフェッショナルモデルです。
「デイトナ」という名は、アメリカのフロリダ州にあるデイトナ・ビーチ(Daytona Beach)が由来です。
デイトナ・ビーチは、モーターレースの聖地とされ、1959年にレース場「デイトナ・インターナショナル・スピードウェイ」が建設される以前は、広大なビーチ(砂浜)を使って、レースが行われていたほど、昔からレースのメッカでした。
時計のモデル名を「デイトナ」とすることで、モータースポーツとの結びつきをアピールしているわけです。
なお、ロレックスが、正式に「デイトナ・インターナショナル・スピードウェイ」の公式タイムキーパーとなったのは1992年で、以来、ロレックスは「デイトナ500」や「ロレックス24アットデイトナ」などの主要なイベントでスポンサーを務めています。
デイデイト
曜日表示と日付表示を備えた「デイデイト」は1956年に登場しました。
「デイデイト」は、腕時計として世界で初めて曜日表示を12時位置に加えたことが特徴です。
「デイデイト」は、ロレックス創設者であるハンス・ウイルスドルフが「真に特別な時計を作りたい」という強い意志のもとで開発されました。
ウイルスドルフは、最高品質の材料と最先端の技術を組み合わせた時計を作りたいと考えており、その結果が「デイデイト」でした。
そのため、ステンレスケースを採用したモデルは存在せず、金無垢やプラチナ、貴金属や貴石を使用したラグジュアリーで特別なモデルとして、ロレックスのスタンダートウォッチの最高峰に今も君臨し続けているモデルです。
「デイデイト」は、別名「プレジデントウォッチ」という愛称でも呼ばれています。これは、アメリカの歴代大統領をはじめとする多くの著名なリーダーたちがこの時計を愛用していたことから生まれた呼び名です。
第34代アメリカ合衆国大統領「ドワイト・D・アイゼンハワー」が最初に「デイデイト」を身につけたことを皮切りに、多くの世界的リーダーがこの時計を手にしました。
この愛称は「デイデイト」のステータスシンボルとしての地位を確立する一因となりました。
デイトジャスト
「デイトジャスト」は、1945年にロレックスの3大発明の一つである「デイトジャスト機構」を搭載したモデルとして誕生しました。
「デイトジャスト」とは、その名の通り、日付が正確に24時を迎えた「瞬間に(ジャスト/JUST)一瞬にして変わる」ことを意味しています。
これは、ロレックスが特許を取得した瞬時に日付が変わるメカニズム「ジャンピングデイト」によって実現しています。
ちなみに、ロレックスは、「デイトジャスト」の発表と同時に、ロレックス創業40周年記念として「ジュビリーブレス」も発表しました。
このブレス(金属製のベルト)は、特徴的な5連のリンク構造を持ち、独特の光沢感と抜群の装着感が魅力の一つです。
ジュビリーブレスは、デイトジャストのクラシックなデザイン、光沢感のあるフルーテッドベゼルと相まって、エレガンスさと快適さを兼ね備えた時計としての今もなお、スタンダードウォッチの代表格として、人気を博しています。
また、回転ベゼルのついた派生モデルは、通称「サンダーバード」と呼ばれています。
エレガンスさをもつ「デイトジャスト」ながら、回転ベゼルがつくことによって、スポーティーさも演出でき、近年、人気の高まっているモデルの一つです。
ちなみに、「サンダーバード」の由来は、アメリカ空軍アクロバットチーム「サンダーバーズ」の隊長の引退記念として、「デイトジャスト」に回転ベゼルを搭載したモデルを特別発注したことによります。
この逸話から「サンダーバード」という愛称で呼ばれています。
パーペチュアル
「パーペチュアル」は、自動巻き機構「パーペチュアル」を搭載したロレックスのスタンダートウォッチの代表格です。
バブルバックから始まり、搭載されるムーブメントを進化させながら、今なお、ロレックスのスタンダートウォッチの定番として、根強い人気を誇っています。
デイト表示のつく「パーペチュアルデイト」モデルにおいては、日付が24時を迎えた瞬間に(ジャスト/JUST)一瞬にして変わる「デイトジャスト機構」も搭載されており、先の「デイトジャスト」と機能面においては、同等とも言えます。
「デイトジャスト」の持つ、時計としてのエレガントさや派手な印象が苦手という方には、こちらの「パーペチュアル」の方が好みに合うかもしれません。
インデックスや針の形状、文字盤の色や仕上げの違いなど、年代によって様々なダイヤルデザインが存在します。
また、ベセルにおいても「スムースベゼル」「エンジンターンドベゼル」などいくつか種類があります。
自分好みの組み合わせの時計を見つけ出すのもヴィンテージならではの楽しみ方と言えるでしょう。
オイスター
「オイスター」は、手巻き式ムーブメントを搭載した機械式時計として最もベーシックな機能を有するロレックスのスタンダートウォッチです。
一般的に、手巻き式腕時計は、自動巻腕時計と比較されると、「(自動巻よりも)機能が単純なもの」「(自動巻よりも)安価なもの」「一世代前のムーブメントを搭載したもの」といった印象を抱かれがちですが、決してそんなことはありません。
手巻き腕時計は、ユーザーが日々の手巻き作業を通じて時計と直接的に関わることで、時計に対する愛着が増し、機械式時計ならではの魅力をより一層楽しむことができるモデルです。
また、手巻き式は自動巻きに比べてムーブメントの厚さを薄くできるため、時計自体が薄型で軽量になるというメリットもあります。
そんな「オイスター」ですが、1980年代半ばを最後に、ロレックスは手巻きのスタンダードウォッチの製造を終了しました。
おおよそ60年にわたって作り続けられた「オイスター」を手に入れるには、もうヴィンテージモデルを探すしか方法はありません。
「オイスター」においても、「パーペチュアル」同様、インデックスや針の形状、文字盤の色や仕上げの違いなど、年代によって様々なダイヤルデザインが存在します。
自分好みの組み合わせの時計を見つけ出すのもヴィンテージならではの楽しみ方と言えるでしょう。
バブルバック
「バブルバック」は、1930年代から1950年代にかけて製造された、ロレックスの初期の自動巻き時計です。
当時、自動巻機構(回転ローター)を搭載するにあたり、裏蓋に厚みをもたせる必要があり、その見た目から「バブルバック(泡のように大きく膨らんだ裏蓋)」と呼ばれています。
正式なモデル名はあくまで「オイスターパーペチュアル」であり、「バブルバック」は愛称です。
また、「バブルバック」も文字盤や針のデザインが豊富で、様々な組み合わせのモデルが存在します。
なお、裏蓋の膨らみが当初よりも小さくなったものは「セミバブル」と呼ばれており、1950年代半ばまで製造されました。
自動巻機構の進化により、初期のモデルよりもムーブメントの厚さを抑えることができるようになり、裏蓋の膨らみ具合も抑えられた形状に変化していきました。
まとめ
いつの時代も人気を集めるロレックス。
このように、ロレックスはハンス・ウイルスドルフという一人のカリスマ経営者の「信頼性の追求」と「類まれない先見の明」、「革新的なアイディア」により、現在の地位を築きました。
それまでの時計メーカーの多くが、時計技術者=創業者であったのに対して、ウイルスドルフは経営者の視点で、ユーザーが時計に対して抱えている不満(課題)を解決すべくアイディアを振り絞ったわけです。
この裏側には、多くの優秀な開発担当者や技術者、製造担当者が奔走していたであろう事実も忘れてはなりません。
今となっては名前も残っていないかもしれない彼らがいたからこそ、ウイルスドルフの理想が実現したわけです。
ウイルスドルフが示した方向性や信念は今なお、ロレックスには脈々と引き継がれているに違いありません。
だからこそ、現代においても、常に、時代の先を見据えた視点により、革新的なモデルを次々と発表し、人々の注目を集め続けているのだと思います。
事実、現行モデルも常に人気が高く、入手が難しい状況が長く続いています。
そのような中でもヴィンテージモデルであれば、まだ手に入れやすいモデルが数多くあるのも事実。
ロレックスとしての根底に流れている時計の魂は、ヴィンテージも現行品も同じだと思いますが、ヴィンテージの方が、ウイルスドルフが考えていたこと、実現したかったことがより一層、強く感じられるような気がしてなりません。
スイートロードでも、スタンダードなモデルからプロフェッショナルモデルまで、数多くのアンティーク、ヴィンテージロレックスを扱っております。
きっと自分だけのお気に入りの1本が見つかるはず。