セイコー 150mダイバーとは

目次

150mダイバーとは

150mダイバーの歴史

150mダイバーの種類

1stモデル

2ndモデル

3rdモデル

ボーイズモデル

4thモデル


150mダイバーとは

1965年から1980年代にかけて登場したセイコーの「150mダイバー」は、時代とともに進化を重ねたセイコーのダイバーズウォッチの代表的モデルです。

これらの系譜は、現代のプロスペックスラインへと繋がる原点ともいえる存在です。

ダイバーズウォッチとしての信頼性と耐久性を確立し、なおかつ日常使いにも馴染むデザイン性を備えていたため、発売当時から幅広いユーザーに支持されました。

特に国内外で多くのファンを生み、今もなお、高い人気を誇っています。

150mという防水性能は、プロ仕様の600mや1000mのハードユースモデルに比べると控えめですが、日常生活やレジャーダイビングには十分すぎる性能でした。

そのバランスの良さが、むしろ使いやすさ、入手のしやすさにつながり、結果的に長い間愛されるシリーズとなったのです。


150mダイバーの歴史

セイコーは、1965年に国産初のダイバーズウォッチとして、「Ref.6217-8000」(150mダイバー・ファースト/1st)を発表し、その後も継続的に改良を重ねていきました。

なお、1964年にオリエントが「カレンダーオートオリエント」において、国産時計で文字盤に初めて”Diver”の文言を記載していますが、当該時計の防水性能は40m防水に過ぎず、一般的にセイコーの150mダイバー・1stモデルが「国産初のダイバースウォッチ」として認知されています。

その後、1968年には「Ref.6105-8000」(150mダイバー・セカンド/2nd)、1976年には「Ref.6306-7000」(150mダイバー・サード/3rd)と、モデルチェンジを行いながら、後継機へと引き継がれていきました。

ちなみに、1967年には、より防水性能の高い「プロフェッショナル300mダイバー:通称62ダイバー( Ref.6215-7000) 」が発売されました。

これにより、150mダイバーは「もっと身近に使えるダイバーズ」としての立ち位置を確立し、プロユースはもとより、レジャー用途において圧倒的な人気を獲得し、海外市場でも高い評価を受けました。


150mダイバーの種類

1stモデル

前期型/Ref.6217-8000(1965年)

エッジが際立ったケースデサインが特徴的で、通称ファーストダイバーと呼ばれています。

1965年4月から製造を開始し、同年6月には後述の後期型を製造しており、実質約2ヶ月ほどしか生産されていない希少モデルです。

竜頭ガードを持たない38mm径のケースを採用しており、リューズは2重パッキン仕様の引き出し式。

裏蓋は防水性の高いスクリューバック式で、イルカマークの刻印が特徴的です。

ベゼルは両方向回転式で、ムーブメントは自動巻「Cal.6217A」を搭載。*手巻き機能はありません。

1966年から1969年の南極観測越冬隊の装備品として寄贈され、南極という極限の環境下においても十分に耐えうる信頼性をアピールしました。

後期型/Ref.6217-8001

仕様は前期型とほぼ同様ですが、竜頭のサイズがわずかに大きくなっています。(操作性を考慮した上での改良と思われる。)

ベゼルもデザインは前期型と酷似しているが、衝撃を受けた際に外れにくい構造に変更されています。

裏蓋も前期型と同様のイルカマークを採用しておりますが、刻印の彫り込みが前期型と比べるとやや深いのが特徴です。

*1967年4月製造分よりイルカではなく「SEIKO」の刻印の裏蓋に変更になる。


2ndモデル

前期型/Ref.6105−8000(1968年)

丸みを帯びたトノー型ケースが採用されており、リューズが4時位置に配置されているのが特徴です。

*1stモデル同様、ねじ込み式ではなく、引き出し式。

裏蓋はスクリューバック式で、「SEIKO」刻印です。

ベゼルも1stモデルと同様に両方向回転式で、ムーブメントは自動巻「Cal.6105A」を搭載しています。*手巻き機能はありません。

後期型/Ref.6105-8110 (1970年)

日本を代表する冒険家の植村直己氏が、北極点到達やエベレスト登頂など数々の偉業で愛用したことで知られるモデル。(*通称「植村ダイバー」)

前期型よりもケースの張り出しが強く、個性的なケース形状が特徴的です。

後期型では初のリューズガードが採用されており、リューズロック機能も有しています。

裏蓋はスクリューバック式で、「SEIKO」刻印です。

ベゼルも1stモデルと同様に両方向回転式で、ムーブメントは自動巻「Cal.6105B」を搭載しています。*手巻き機能はありません。


3rdモデル

国内モデル/Ref.6306-7000/Ref.6306-7001(1976年)

3rdモデルの中でも国内向けに製造されたモデルで、製造時期によって、前期型(Ref.6306-7000)と後期型(Ref.6303-7001)が存在します。

インデックスや針の形状変更に加え、デイデイト表示を備えるなど、実用性や視認性の向上が図られています。

ケースデザインは2ndモデルに似ているものの、竜頭ガードの張り出しはなくなり、初のねじ込み式リューズを採用。

裏蓋はスクリューバック式で、ベゼルも1stモデルと同様に両方向回転式です。

ムーブメントは自動巻「Cal.6306A(21石)」を搭載しており、ハック機能(秒針停止機能)を搭載しています。*手巻き機能はありません。

輸出モデル/Ref.6309-7040Ref.6309-7049(1976年)

3rdモデルの中でも海外向けに製造されたモデルで、Ref.6309-7049(北米向け)とRef.6309-7040(北米以外)が存在します。

現在も海外で人気が高く、ケースの見た目が「亀(Turtle)」に似ていることから「タートル」の愛称で親しまれています。

主なデザインや仕様は同じですが、価格を抑える(製造コストを抑える)ために、国内仕様モデルよりも機能を絞ったムーブメント「Cal.6309A(17石)」を採用しています。そのため、ハック機能はありません。

スキューバプロ450(Ref.6306-7001

「SCUBAPRO(スキューバプロ)」とは、1963年にアメリカ・ロサンゼルスで誕生したスキューバダイビング総合器材メーカー。

当時のSCUBAPRO(スキューバプロ)日本支社からの依頼を受け、セイコーが別注品として製造した大変珍しいモデルです。

時計自体の仕様は、Ref.6306-7001と同様ですが、日本国内のダイビング専門ショップでのみ販売され、総生産数は100本未満と推察されています。

一般の時計店では販売されていなかったこともあり、現在では、このモデルの存在自体もあまり知られていません。

文字盤には「SCUBAPRO 450」と記され、6時下のダイヤルコードも固有のものが当てられています。(JAPAN 6306-700JT)。

ちなみに、450という数字はおそらく「150m≒450ft.」と計算して、防水性能を表しているものと推測されています。


ボーイズモデル

Ref.2205-0760(1970年代後半)

33mm径のボーイズサイズケースを採用したモデルで、女性や小柄な人向けに販売されました。

通常の150mダイバー同様のデザインですが、リューズは3時位置に配置されています。

自動巻ムーブメント(Cal.2205A)を搭載。


4thモデル

Ref.6309-7290(1980年代)

1980年代に登場した150mダイバーの4世代目といえるのが、4thモデルです。


まとめ

セイコー「150mダイバー」は、国産ダイバーズの歴史を語るうえで欠かせない存在です。

1stから4thまで、時代ごとのニーズに応えながら進化を遂げ、国内外で愛され続けました。

特に「ファーストダイバー」「植村直己モデル(2nd後期)」などは現在も高い人気を誇り、セイコーの名を世界に轟かせた立役者であり、メモリアルモデルでもあります。

ダイバーズウォッチという枠を超えて「冒険」「挑戦」「信頼」を象徴する存在となった「150mダイバー」。

また、現代の200m防水や1000m防水と比べればスペックは劣りますが、「150mダイバー」には国産ダイバースウォッチとしての「始まりの物語」と「ヴィンテージの魅力」が詰まっています。

手に取れば、その背景にあるストーリーまでも味わえる、それが「150mダイバー」の最大の魅力です。