ロレックス・オイスターブレスレットの歴史
これまで、ロレックスのブランドとしての歴史や、「SWISS表記について」、「シグマダイヤルについて」、など度々ご説明させていただきました。
そこで今回は、お客様からも質問されることが多く、ロレックスのブレスレットの中でも特に人気の高い「オイスターブレスレット」についてご紹介させていただきます。
目次
・折りたたみリンクを備えた第2世代(1967年〜1975年頃)
・ソリッドリンクを備えた第3世代(1975年頃〜2000年代)
・ソリッドエンドリンクが付いた第4世代(2000年~2010年)
・オイスターロックとグライドロックを備えた第5世代(2010年~現在)
オイスターブレスレットとは
オイスターブレスレットとは、3連のリンク(コマ)で構成されたブレスレットのことを指します。
時代によってコマやバックルの仕様が変更されていますが、3つのコマが並んでいるという基本のデザインは現在でも変わっておりません。

オイスターブレスレット以前(〜1945年)
現在のロレックスではブレスレット付きのモデルがほとんどですが、オイスターブレスレットが登場する以前はレザーベルトで販売されていました。

1920年代初頭より、ロレックスは様々なサプライヤーのブレスレットを時計のオプションとして販売していましたが、その中でも最も優れていたのが、スイスの高級ブレスレットメーカーである「Gay Frères/ゲイ・フレアー」が製造していた「ボンクリップ(別名:バンブー)」でした。

ジュビリーブレスレットの開発(1945年)
第二次世界大戦終結からわずか数ヶ月後の1945年11月下旬、創業者のハンス・ウィルスドルフが世界中のロレックス販売会社をホテル・デ・ベルグ(現在はクリスティーズのオークション会場としても使われている国際的なラグジュアリーホテル)に招待し、「ウィルスドルフ&デイビス(ロレックスの旧社名)」の40周年記念式典を開催しました。
そこで発表されたモデルが、自動巻きのレディースモデル「Ref.4487」と、初代デイトジャスト「Ref.4467」でした。

この時、デイトジャストのためにロレックスが初めて自社で開発したブレスレットこそ、現在でも高い人気を誇る「ジュビリーブレスレット」です。
この象徴的なブレスレットはデイトジャストに不可欠な要素となり、ロレックスのドレスウォッチにおける最高級ブレスレットとしての地位を確立しました。

1945年頃の広告。
現在のクラスプタイプではなく、レディースモデルで見かけるデザインの留め具が採用されていた。
ストレートエンドリンク(1948年〜1951年頃)
ジュビリーブレスレットの開発から、わずか数年後の1947年には、オイスターブレスレットの特許を取得し、1948年にロレックスのカタログに初登場しました。
3つのリンクからなるシンプルなデザインで、当初はストレートなエンドリンクと、コマの中にバネを仕込み伸ばすことができる、エクステンション仕様のブレスレットを採用しています。
これにより様々な時計モデルへの取り付けが容易になりましたが、全体的な印象としては、カスタムメイド感やフィット感に欠けるブレスレットとなっていました。
また、この頃はまだバックルに王冠マークが配されておらず、あくまでもゲイ・フレアー社のブレスレットという印象が強いです。

1948年頃のアメリカの広告。
「スイスから輸入したブレスレットを付けられます。」という宣伝が行われていました。
フラッシュフィットの開発(1952年)
1952年、ロレックスはオイスターケースの湾曲した部分にフィットするエンドリンクの特許を取得し、1954年に「フラッシュフィット」として発表しました。
ゲイ・フレアー社は、これから紹介するオイスターブレスレットが将来的に人気になるとは全く予想していなかったものの、ロレックスが新しく導入するスポーツウォッチのため開発を行いました。
このフラッシュフィットを採用した最初の時計は、初代サブマリーナ/Ref.6204と初代GMTマスター/Ref.6542でした。
さらに1年後には、エクスプローラー(Ref.6610)にも採用されています。
これがロレックスにとって非常に大きな変化となり、フラッシュフィット仕様のオイスターブレスレットは様々なモデルに向けて製造されることとなります。

1950年代の広告。(左)Ref.6204、(右)Ref.6542。
最初のオイスターブレスレット(1954年〜1967年頃)
代表的なモデル
・7205(19mm)
・7206(20mm)
・6635(19mm/エクステンション式)
・6636(20mm/エクステンション式)

「リベットブレスレット」と呼ばれる、コマの横をリベット留めしたデザインが特徴のブレスレットです。
1950年代のオイスターブレスレットは、後年に登場するブレスレットほどの耐久性を備えてはおらず、まだ完璧ではありませんでした。

金属(中空リンク)の軽さから、ブレスレットはすぐに緩み、留め具は比較的簡単に壊れてしまう傾向があったため、完璧な状態を保っている個体はほとんど残っていないと言えます。
そういった背景も含めて、コレクターからは非常に人気が高く、探している方も多いモデルです。
ブレスレットには、「コマ(もしくはクラスプ)」と「FF(フラッシュフィット)」の両方にリファレンスが割り振られており、後年になるにつれ細分化されていきますが、初期の頃は同じリファレンスでも異なる素材で作られたモデルも作られていました。
下記は「Ref.7205」「FF57」と同じ番号のブレスレットですが、素材やバックルのデザインが異なっています。



また、同時期に「6635」「6636」のリファレンスを持つ、各コマが隣接するコマからわずかに離れる独創的なバネ式機構を備えた、エクステンション式(ストレッチリベットとも呼ばれる)のリベットブレスレットも発売されていました。

このストレッチリベットブレスレットは、リンクの間に毛が挟まりやすく、あまり頑丈ではないという特徴があったため、次世代からは作られなくなりました。
折りたたみリンクを備えた第2世代(1967年〜1975年頃)
代表的なモデル
・7835(19mm)
・7836(20mm)
・9315(20mm/ダイバークラスプ)
・9316(20mm/ダイバークラスプ)

(上)7835、(下)7836
1967年頃、それまでのリベットブレスレットから入れ替わるように、「フォールデッドリンク」と呼ばれるオイスターブレスレットが市場に登場しました。
現在では「巻きブレス」とも呼ばれており、一枚のスチール板を幾重にも折り重ねた構造なため、リベット式よりも本質的に強度に優れています。

1969年頃にシードゥエラーとサブマリーナに導入された「9315」には、ダブルロック式の特別なダイバークラスプが付いていました。
「9316」はシードゥエラー専用です。
ソリッドリンクを備えた第3世代(1975年頃〜2007年頃)
代表的なモデル
・78350(19mm)
・78360(20mm)
・93150(20mm/ダイバークラスプ)
・93160(20mm/ダイバークラスプ)

(上)78350、(中)78360、(下)93150
1970年代半ば、ロレックスのブレスレットの中でも最も堅牢な「ソリッドリンクブレスレット」が登場しました。
金属の塊を加工したデザインや重量感から、「ハードブレスレット」とも呼ばれています。

前世代のリファレンス番号にゼロを追加した「78350/78360」は、シングルロック式のバックル。
ダイバークラスプを備えた「93150」はサブマリーナに搭載され、GMTマスターとエクスプローラーにもオプションとして購入が可能でした。
シードゥエラー専用の「93160」も同様にダイバークラスプを備えています。

ちなみに、同じ93150のブレスレットでも、90年頃になると下のタイプの溝ありロックにマイナージェンジしています。
機能性の向上というよりは、デザインの統一感を持たせるためのようです。
また、1998年には、ブレスレットを供給していたゲイ・フレアー社を正式に買収します。
これにより、品質の安定化と供給リスクの回避に直結しました。
ソリッドエンドリンクを備えた第4世代(2000年~2010年)

2000年代初頭、ロレックスはオイスターブレスレットに究極の堅牢性を求め、ソリッドエンドリンク(solid end links/SEL)を採用し始めました。
最初のうちは、サブマリーナやシードゥエラーにのみ採用していましたが、ブレスレットの寿命が大幅に延び、今後数十年にわたってガタつきがほとんど発生せず、本来の堅牢性と安定性をほぼ維持できることが証明されたため、現在ではゴールドやプラチナを含むロレックスの全ての時計に使用されています。
オイスターロックとグライドロックを備えた第5世代(2010年~現在)


引用:ROLEX公式サイト
現在、スポーツロレックスなどに採用されているブレスレットで、オイスターロックとグライドロックなど、最新技術により強度と洗練さを兼ね備えています。
当時のブレスレットの扱いについて
現在ではブレスレット付きで販売されているのがほとんどですが、当時の資料を見ているとあることに気づきました。


こちらは、1972年の販売カタログの一部ですが、上の「6426/6694」には年代にあった「巻きブレス」が取り付けられていますが、下の「5501/5500/6552」に関してはリベットブレスが装着されています。
新しいブレスレットが登場しても、一律で変更することはなかったようです。
しかし、プライスリストを見ると、通常は〝革ベルト(strap)〟で販売されていることがわかります。

実は、ブレスレットはオプションとして販売されていたため、専用のプライスリストがありました。
ちなみに、B206が19mm幅のリベットブレスです。(カタログナンバーなので、ブレスレットの型番とは異なります。)

1975年のプライスリストでは、5500や6694の項目を見ると、通常価格の下に「with steel Oyster bracelet ref.7835」という形で、巻きブレスが選択できるようになっています。

1988年になると、5500は「7835/巻きブレス」もしくは「6251/ジュビリーブレス」が選択できたようです。
6426や6694に関しては、「7835/巻きブレス」のみの価格しか載っておらず、おそらく革ベルトでの販売が終了していたのでしょう。

他のモデルでも、それぞれに対応するブレスレットが記載されており、購入する際に選べるようになっていたようです。
革ベルト付きを最初に購入し、後からブレスレットを追加で揃えて、その日の気分で付け替えてた人もいたはずです。
そう考えると、ヴィンテージロレックスに関しては、販売時から装着されていたオリジナルのブレスレットというものは、厳密には後年にならないと存在しないのかもしれませんね。
やっぱり時計は〝楽しく使う〟ことも大事ですので、あまりこだわり過ぎない方が楽しめると思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回は「ジュビリーブレスレット」について、掘り下げてご紹介したいと思います。
お楽しみに。
関連リンク
