ロレックスの「SWISS」表記について
皆さんは、腕時計の文字盤に記された表記に時代ごとの違いや意味があることをご存じですか?
時計の文字盤には、ブランド名、モデル名を記す表記以外にも、防水性や機能性、インデックスや夜光の素材、製造国など多数の情報が記されており、モデルによって様々な特徴を持っています。
今回は、ロレックスの文字盤6時下に表記されている「SWISS」表記について、深堀りしてご説明をさせていただきます。

目次
SWISS/SWISS MADE(1900年-1962年頃)
T SWISS T/T SWISS MADE T/SWISS – T<25(1963年-1997年頃)
SWISS表記とは
ロレックスの文字盤6時下に表記された「SWISS」表記。
文字通り、スイス製造ということを意味した表記ですが、この表記は時代やモデルごとに違いがあり、個体の年代や整合性を確認する際の一つの判断基準になります。
また、珍しい表記の個体や、製造数の少ないものに関しては、希少価値や付加価値が付いているものも少数存在します。
ここでは、そんなロレックスの「SWISS」表記を、時代別にご紹介いたします。
SWISS/SWISS MADE
(1900年-1962年頃)
ロレックスでは、1900年-1962年頃まで、文字盤や針の夜光塗料にラジウムが使用されており、ラジウム夜光の文字盤には「 SWISS 」または「 SWISS MADE 」表記が記されています。
「SWISS」表記

「SWISS MADE」表記

ラジウムは放射線発光素材(有害物質)ですが、風防やケースを透過することはなく、使用する上での問題はほとんど無かったのですが、1920年代-1930年代にかけてアメリカで起こった事件とその訴訟の影響により、1963年頃より放射性物質をほとんど含まない夜光塗料トリチウムに切り替わります。
(※詳細に関しては、ラジウム・ガールズ(wikipedia参照)で調べてみてください。)
T SWISS T/T SWISS MADE T/SWISS – T<25
(1963年-1997年頃)
前述の通り、1963年頃より文字盤や針の夜光に自発光素材トリチウムが使用されるようになり、「SWISS」「SWISS MADE」表記に、トリチウムを意味する「T」の文字が入ります。
トリチウム夜光は、弱いエネルギーで夜光塗料を自発光させますが、半減期は約12年と短く、現在ではそのほとんどの個体が自発光しなくなっています。
また、時期や個体によって、トリチウムに使用している蛍光塗料が違うため、経年による変色加減や反応具合も千差万別です。
トリチウム夜光は、後述するルミノバ夜光に変わるまでの約34年間使用されており、6時下表記の中でも一番多くのバリエーションが存在します。
年代やモデルによってバリエーションは様々で、代表的な表記の種類は下記の通りです。
「T SWISS T/-T SWISS T-」

主に1963-1983年頃までのスタンダードモデルに使用された表記です。
その他にも、GMTマスターのコンビモデル「フジツボ(Ref.1675/16753)」や、サブマリーナのコンビモデル「青サブ(Ref.16803)」などにも使用されています。
「-」で囲われた「-T SWISS T-」のパターンも存在します。

「T SWISS MADE T」

1984-1997年頃のスタンダードモデルや、デイトナ(Ref.16520/16523)などに使用された表記です。
「SWISS – T<25」

サブマリーナ(Ref.5513/1680シリーズ)や、GMTマスター(Ref.1675シリーズ)、エクスプローラーⅠ(Ref.1016)、エクスプローラーⅡ(Ref.16550/16570)など、多くのスポーツモデルに使用された表記です。
ちなみに「<25」は、放射線量が25マイクロキュリー以下ということを表しており、放射能量としては紙1枚で防げる程度と弱く、人体への影響がなく安全ということを示しています。
また、エクスプローラーⅠ(Ref.14270)には、Tスタートの「T SWISS – T<25」表記、

エクスプローラーⅡ(Ref.1655)の後期頃(80年代後期)には、Tスタート/Tエンドの「T SWISS < 25 T」表記など、マイナーチェンジした表記が採用されています。

余談ですが、実際にはトリチウム夜光は1950年代から部分的に使用されており、ごく一部ではありますが、1963年以前に製造されたロレックスの文字盤に「T SWISS T」と表記されている個体も存在します。
また、逆パターンで、1963年以降に製造され、「T SWISS T」と表記されていながら針やインデックスに元々夜光が付いていない個体も存在します。
SWISS MADE
(1997年-2018年頃)
1997年以降は、トリチウム夜光からルミノバ(スーパールミノバ)夜光に変更となり、「T」表記の無くなった「SWISS MADE」表記に切り替わります。

SWISS表記/ONLY SWISS(1998年後期-1999年初期頃)
1997年頃から始まった、トリチウムからルミノバ夜光への移行ですが、徐々に切り替わりが行われていたため、過渡期には、「SWISS」表記のみの個体も存在します。
通称「ONLY SWISS」と呼ばれており、「T SWISS MADE T」から「SWISS MADE」に切り替わる間の非常に短い期間(1998年後期-1999年初期頃)にのみ製造されていました。

トリチノバ(1997年-1998年頃)
前述の通り、トリチウムからルミノバへの移行は徐々に行われており、1997年製にあたるU番シリアルでは「T表記あり」と「T表記なし」のダイヤルが混在します。
稀に「T表記なのに、実際はルミノバが塗られている」という個体もあり、通称「トリチノバ」と呼ばれています。

まとめ
いかがでしたでしょうか。
SWISS MADE表記一つとっても、こんなに沢山の種類があり、ロレックスというメーカーの歴史を感じることができます。
2017年にはスイス製時計を定義する新しい規定「SWISSNESS法」が導入されたことで、今度も表記方法が変わっていくかもしれません。
是非、ご自身のロレックスの表記も確認してみてください。
