腕時計の針の種類
以前、「腕時計の用語解説」のトピックスにて、パーツ名称として登場した「針」について、より細かくデザイン(形状)の観点からご紹介させていただきます。
「針」は文字盤と並んで「時計の顔」とも言えるパーツの一つです。
クロノグラフ、ダイバーズウォッチ、ドレスウォッチといった時計の役割によって異なるのはもちろんのこと、時計そのものに合わせたデザインや製造技術の向上、トレンドなど、様々な要因で時代と共に変化していきます。
さらに「同じモデルでも使われている針のデザインが違う」ということもヴィンテージ時計の世界では極当たり前に存在します。
ヴィンテージ時計ならではの針もございますので、是非お好みのデザインを探してみてください。
目次
バー針
時計の針の中で最もシンプルな形状の針です。
その名の通り棒(バー)状の針で、先端が平らなことが特徴。
スタンダードウォッチやドレスウォッチなど、現在でも様々なモデルに採用されています。
アルファ針
ギリシャ語における最初の文字、1番を意味する「α(アルファ)」から名付けられています。
後述するドーフィン針とも似ていますが、こちらは針の根本が絞ったようにくびれているのが特徴です。
50年代~60年代前半の時計に採用されていることが多く、ヴィンテージモデルらしさを強調する針の一つでもあります。
ドーフィン針(ドルフィン針)
針の根本は太く、先端に向かって細くシャープに尖った形状をした針です。
ドルフィン針とも呼ばれていますが、イルカ「Dolphin(ドルフィン)」ではなく、フランス語で皇太子妃を意味する「dauphine(ドーフィン)」が由来となっており、ブランド問わず高級機種に多く採用されています。
(ドーフィンの語源がドルフィンとの説もあり、全く関係がないとも言いきれません。)
ペンシル針
バー針の先端を尖らせたデザインで、鉛筆のような形状に見えることから名付けられた針です。
視認性に長けており、現在でも非常に多くのモデルに採用されています。
バー針に近い形状ですが、先端の尖った細いタイプもペンシル針と言うこともあります。
ベンツ針(メルセデス針)
ドイツの高級自動車メルセデスベンツのマーク「スリーポインテッドスター」に似ていることから、「ベンツ針」または、「メルセデス針」と呼ばれています。
ロレックスのスポーツモデルやバブルバック系のモデルに多く採用されています。
リーフ針
葉のような緩やかなカーブが描かれた形状から名付けられた「リーフ針」。
モデルによって膨んだ部分の太さも異なり、他の針よりも多様性が感じられます。
ソード針
針の先端と軸が細まっている、剣(ソード)のような形状をしている針です。
視認性が非常に高く、瞬時に時刻を確認することができるため、ベンツ針と並びスポーツモデルに多く用いられています。
ローザンジュ針
フランス語で菱形(ひしがた)を意味する「ローザンジュ」から名付けられた針です。
その名の通り非常に細長い菱形の形状が採用されており、ドーフィン針やソード針よりも中央部分の幅が一番広くなるのが特徴です。
バトン針
フランス語で「棒」や「杖」という意味を持つバトン針。
バー針とよく似ていますが、バー針が根本から先端まで太さが一定なのに対し、バトン針は根本から先端に向かって徐々に太くなるのが特徴です。
カルティエなどの高級時計に多く見られるデザインです。
アロー針
針の先端が「矢印の形状」をした針。
矢印針、アローハンドとも呼ばれ、視認性の高さが魅力です。
チューダーのレンジャーや、オメガのダイバーズウォッチに多く見られます。
イカ針(スノーフレーク)
針の先端が大きく角ばった形状が「雪の結晶/スノーフレーク(Snow Flake)」に似ていることから、呼ばれるようになりました。
1970年代にチューダーのサブマリーナに取り入れたことから始まりますが、現在でも「ヘリテージ・ブラックベイ」などに採用されています。
ロレックスにはない個性を持つため、あえてロレックスではなくチューダーを選ぶ方も多いです。
日本では、見た目がイカのような形状をしているため「イカ針」とも呼ばれています。
タコ針
メルセデス針の夜光を三分割する線がない、まん丸の形状をした針です。
主に短針に採用される針で、チューダーのイカ針の対になる意味も含め、「タコ針」と呼ばれています。
60年代のオリエントのダイバーズモデルにもタコ針と呼べる形状の針が採用されている個体が幾つか存在します。
コブラ針/サーペント針
針の先端がコブラの頭部に見えることから命名された「コブラ針」
夜光塗料が塗布されており、視認性が高く、ミリタリーウォッチやパイロットウォッチに多く使われています。
サーペント針
その名の通り、ヘビのように湾曲した形状が特徴の針です。
懐中時計から影響を受けたデザインであり、カレンダーなど、時刻を示す以外の機能で主に用いられています。
ブレゲ針
高級腕時計ブランド「Breguet(ブレゲ)」の創設者であり、天才時計師と謳われたアブラアム=ルイ・ブレゲにより生み出された針です。
針の先端に丸い穴が開いたデザインが特徴で、上品でクラシカルな印象を受けます。
「針が重なっても時刻を読み取りやすい」「文字盤の数字と針が重なっても数字を隠さない」など、デザイン性だけでなく、視認性もしっかりと考えられています。
膨らんだ箇所のやや先端に穴を開けるのは、意識を文字盤の外側に向け、無意識であっても時刻を読み取りやすくするためでもあるそうです。
スペード針
針の先端がスペードマークのようにデザインされたものを「スペード針」と呼びます。
1900年代初期の懐中時計の時代から使われていたこともあり、クラシカルなアンティーク時計に見られます。
シリンジ針(モダン針)
先端に付けられた細い突起がシリンジ(注射器)のように見えることから名付けられた「シリンジ針」。
40年代~50年代のヴィンテージモデルで見かけることが多く、伝統的な形状の針のひとつです 。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ひとくちに時計の針といっても、多種多様な形状が存在し、それぞれにデザインや機能などの特徴があります。
様々な時計の針を知ることで、お気に入りの針がきっと見つかるはずです。
是非、時計探しの一つのポイントとして役立ててみてください。