こんにちは! 銀座店のイシイです。
さて、本日は、イシイのおすすめウォッチの紹介です。

ご存知の方も多いと思いますが、このインヂュニア(ingenieur)とは、ドイツ語で「技術者」を表す言葉の通り、技術者や科学者、研究者、医者など、日常的に磁気・磁場の強い環境で仕事をする人向けに開発された時計です。
当時としては驚異的な80000A/m(アンペア毎メートル)もの耐磁性を備えた特殊な時計です。
その耐磁性を担保するものが、軟鉄製のシールドです。
この初期のインヂュニアには、文字盤の裏側と、裏蓋の内側にそれぞれ軟鉄製のシールドを配置することで、ムーブメントを磁気から守っていました。

ちなみに、インヂュニアの原型となったIWCのパイロット・ウォッチである「マーク11」も耐磁性を備えた時計ですが、マーク11では文字盤自体を軟鉄製のものを使用し、耐磁性を担保していました。
しかし、このインヂュニアでは、軟鉄製の文字盤を採用しませんでした。
それは、文字盤の形状に理由があります。
インヂュニアでは、文字盤がドーム状に膨らんだ「ボンベ文字盤」を採用したかったためです。
軟鉄製の文字盤をボンベ仕様に加工するには当時、膨大なコストが掛かったそうです。そのため、ケースの厚みは増してしまうが、文字盤の下に軟鉄製のシールドを挟むという手法を選びました。

では、なぜ、そこまでして、IWCはインヂュニアに「ボンベ文字盤」を採用したかったのか?
そこには、おそらくインヂュニアを「実用性を兼ねそなえた高級時計」という立ち位置で販売したかったのでしょう。
顧客ターゲットは、先にも書いた通り、技術者や科学者、医者などホワイトカラー層です。彼らに選んでもらう、満足してもらうためには、実用性だけではなく高級時計としての美しさも必要だったわけです。
現に、初期モデルの頃から、18KYGケースのモデルもラインナップに入っていました。

今回オススメする個体は、なんといってもブラックミラー文字盤をまとった1本です。
当時の時代性から考えてみてもブラックの文字盤の個体は希少です。おまけに、非常に味のある経年を経ている個体です。

実用性と高級時計としての矜持、
そしてヴィンテージとしての美しさまでも兼ね備えた希少な1本。
やっぱり逸話があったり、
オーバースペックな時計にばかり惹かれていましますね。
皆さんもそうですよね?
以上、やっぱり何事もすぐに背景を調べたがる
スタッフ・イシイでした。
