セイコーの「SDダイヤル/EDダイヤル/ADダイヤル」とは

目次

・はじめに

・SDダイヤルについて

・EDダイヤルについて

・ADダイヤルについて

・その後のマークの行方


はじめに

1950年代から60年代中頃までのセイコーを見ていると、文字盤の6時位置に「星のようなマーク」が表記されているモデルが目に付くと思います。

そのマークは全部で3種類あり、それぞれ

「SDダイヤル」

「EDダイヤル」

「ADダイヤル」

という名称が付けられています。

インデックスに使用されている素材や仕上げがそれぞれ異なっており、マークと名称は以下のように分けられています。

マーク以外にも細かな違いがありますので、上から順にご紹介させていただきます。


SDダイヤルについて

「SDダイヤル」とは、1950年代後半から60年代初期に製造されていた、インデックスに18金無垢(もしくは14金無垢)を使用したモデルを指します。

十字手裏剣を2枚重ねたようなマーク(八芒星とも呼ぶ)が特徴で、正式名称は「SD/Special Dial(スペシャル・ダイヤル)」

(※スペシャルダイヤルダイヤルとなってしまいますが、説明文や口頭で伝える場合には、あえてSDダイヤルと言っています。)

高級機種の「クラウン」や「ロードマーベル」、「初期のグランドセイコー」などに採用されています。

初期の頃は植字文字盤と言えばSDダイヤルを指していましたが、地金のコストの問題もあり、次に紹介する「EDダイヤル」が登場します。


EDダイヤルについて

EDダイヤルは、真鍮地金に金メッキやニッケル合金を用いたインデックスのモデルを指します。

正式名称は「ED/Extra Dial(エクストラ・ダイヤル)」

実用機種の「クラウン」や「チャンピオン」などに採用されていましたが、湿気に弱く、光沢が長期間保たれないという問題がありました。

そこで1963年頃、SGP硬質金メッキが実用化されたのをきっかけに順次ADダイヤルに移行していきます。


ADダイヤルは、インデックスにSGP硬質金メッキが使用されたモデルを指します。

正式名称は「AD/Applique Dial(アップリケ・ダイヤル)」

SGP硬質金メッキは光沢が長く保たれ、おまけにコストも低いという利点があるため、その後のほとんどの植字文字盤はADダイヤルが採用されています。


その後のマークの行方

その後、これらのマークは次第に表記されなくなり、1964年5月頃からは、文字盤外周6時下にある文字盤記号(番号)の末尾に「AD」や「ED」と表示されるだけとなります。

特にマイナーチェンジを繰り返している初代グランドセイコー57GSなどを見ていると、同じモデルでも製造された年月のほんのわずかな差で、インデックスの仕様が変わっていたりします。

ちなみに、この6時下の表記も1970年頃から使われなくなっています。

次々に新作が誕生する時代でもあり、細かくマイナーチェンジが行われていたりと、高度成長期ならではの仕様の変化が面白いですよね。

この歴史的な背景を知っているのと知らないのとでは、アンティークセイコーの見え方がガラッと変わるかと思います。

あくまでも良し悪しの話ではなく、セイコーの時代の歩みの一端をご紹介しているだけですので、是非この機会に注目していただけたらと思います。