腕時計の操作方法について

これまで、「時計の各パーツの名称」や「ムーブメントの種類」など、いくつか解説させていただきました。

今回は、ヴィンテージ時計を含めた「腕時計」そのものの使い方に慣れていない方に向けて、腕時計を操作をするための 「リューズの種類や実際の使い方」について解説いたします。


目次

リューズ(竜頭)とは

リューズの種類

様々なモデルにおける操作方法について

ロレックスの主なモデルの操作方法

Cal.1000系(自動巻/手巻き)

Cal.3000系(自動巻)

オメガの主なモデルの操作方法

Cal.500系 前期(自動巻)

Cal.500系 後期(自動巻)

Cal.700系(自動巻)

Cal.1000系 デイト(自動巻)

Cal.1000系 デイデイト(自動巻)

Cal.1000系 クロノグラフ(自動巻)

IWCの主なモデルの操作方法

Cal.8541系(自動巻)

セイコーの主なモデルの操作方法

56系/52系(自動巻)

61系/62系(自動巻)

150mダイバー 2ndモデル 後期(自動巻)

150mダイバー 3rdモデル(自動巻)

6138系クロノグラフ(自動巻)

6139系クロノグラフ(自動巻)

7015系クロノグラフ(自動巻)

操作における注意点について


リューズ(竜頭)とは

リューズ(竜頭)は、主に時計の3時位置に備えられた、時計を操作するための突起です。

ちなみに、3時位置だけではなく、12時位置、4時位置、6時位置、9時位置、裏蓋側にリューズが備わったモデル等、様々なタイプが存在します。

・リューズの役割

リューズには主に、3つの役割があります。

・ゼンマイを巻く

・カレンダーの日付を合わせる

・時刻を合わせる

他にも特殊な例として、GMT機能や回転式のインナーベゼルの操作、アラーム時刻の設定といった役割も担っています。


リューズの種類

引っ張ったり、押し込んだりして作動させますが、リューズには大きく分けて2つのタイプが存在し、それぞれ特徴が異なります。

一つは「引き出し式」、もう一つは「ねじ込み式」です。

・引き出し式

大半の時計で採用されている、すぐに操作できるようリューズが固定されていない方式。

リューズを矢印の方向に軽く引っ張ると引き出せます。

摘んだり、リューズとケースの隙間に爪を差し込むようにすると、引き出しやすいです。

戻す時は、本体側にそっと押し込むだけでOKです。

・ねじ込み式

ダイバーズウォッチやオイスターケースなどに採用されている方式で、リューズをケース側にねじ込んでロックすることにより、防水性能を高めています。

リューズを手前(6時方向)に回して、ねじ込みが緩んで、ロックが解除され、リューズの操作ができるようになります。

リューズを手前(6時方向)に回すと、ねじ込みが緩んで、ロックが外れます。

ロックが外れた状態で、矢印の方向に軽く引っ張ると引き出せます。

再びロックする際は、リューズを時計本体に軽く押し付けながら、12時方向に回し、ねじ込んでください。

※ロックをする(ねじ込む)ときは、ネジの噛み合い具合に注意してゆっくりと押しながら回してください。

※無理に押し込むと、ケースやリューズ内部のネジを壊す恐れがありますのでご注意ください。


様々なモデルにおける操作方法

腕時計の一般的な操作方法は以下の通りかと思います。

・リューズ0段引き(リューズが引き出されていない状態)で「ゼンマイの巻き上げ」

・リューズ1段引きで「日付の早送り」

・リューズ2段引きで「針の操作(時刻合わせ)」

(※ノンデイトモデルは、1段引きで針の操作/時刻合わせ)

しかし、ヴィンテージウォッチの世界では、この操作方法がほとんど当てはまりません。

というのも、70年代以前までは「デイト付き=高級時計」という時代が長らく続いており、各メーカーで操作方法が異なるというのが当たり前でした。

次の章からは、それぞれのメーカーが採用していた主な操作方法をご紹介させていただきます。


ロレックスの主なモデルの操作方法

Cal.1000系(自動巻/手巻き)

リューズを6時方向に回し、ねじ込みを緩めて、ロックを解除します。

リューズを1段引くと、針の操作(時刻合わせ)が行えます。

日付の早送り機能はありませんので、針を24時間回して日付を送ります。

日付と時刻を合わせたら、リューズをそっと押し込みながら12時方向にねじ込み、ロックします。

◆操作方法が同じモデル一覧

Cal.1530(自動巻)/Cal.1560(自動巻)/Cal.1570(自動巻)/Cal.1030(自動巻)/Cal.1225(手巻き)/Cal.1215(手巻き)/Cal.1210(手巻き)/Cal.1130(自動巻)/Cal.1161(自動巻)/Cal.2030(自動巻)/Cal.A296(自動巻)

Cal.3000系(自動巻)

リューズを6時方向に回し、ねじ込みを緩めて、ロックを解除します。

リューズを1段引き、リューズを6時側に回すと、日付の早送りが行えます。

リューズを2段引くと、針の操作(時刻合わせ)が行えます。

日付と時刻を合わせたら、リューズをそっと押し込みながら12時方向にねじ込み、ロックします。

◆操作方法が同じモデル一覧

Cal.3035(自動巻)/Cal.3135(自動巻)/Cal.3075(自動巻)/Cal.3175(自動巻)/Cal.2135(自動巻)/Cal.2235(自動巻)


オメガの主なモデルの操作方法

Cal.500系 前期(自動巻)

リューズを1段引くと、針の操作(時刻合わせ)が行えます。

針を操作し、日付が変わる前後の午前1時から午後8時の間を往復することで、日付の早送りが行えます。

日付と時刻を合わせたら、リューズを元の位置に押し戻します。

◆操作方法が同じモデル一覧

Cal.503(自動巻)/Cal.561(自動巻)/Cal.562(自動巻)/Cal.610(手巻き)/Cal.681(自動巻)/Cal.682(自動巻)/Cal.684(自動巻)

Cal.500系 後期(自動巻)

リューズを1段引くと、針の操作(時刻合わせ)が行えます。

リューズを2段引いた瞬間に日付が早送りされます。

1段引きと2段引きを行き来して、日付を早送りしてください。

日付と時刻を合わせたら、リューズを元の位置に押し戻します。

◆操作方法が同じモデル一覧

Cal.563(自動巻)/Cal.564(自動巻)/Cal.565(自動巻)/Cal.613(手巻き)

Cal.700系(自動巻)

リューズを1段引くと、針の操作(時刻合わせ)が行えます。

リューズを2段引いた瞬間に日付が早送りされます。

1段引きと2段引きを行き来して、日付を早送りしてください。

曜日の早送り機能はありませんので、針を24時間回して曜日を送ります。

日付と時刻を合わせたら、リューズを元の位置に押し戻します。

◆操作方法が同じモデル一覧

Cal.750(自動巻)/Cal.751(自動巻)/Cal.752(自動巻)

Cal.1000系 デイト(自動巻)

リューズを1段引くと、日付の早送りが行えます。

リューズを2段引くと、針の操作(時刻合わせ)が行えます。

日付と時刻を合わせたら、リューズを元の位置に押し戻します。

◆操作方法が同じモデル一覧

Cal.1001(自動巻)/Cal.1002(自動巻)/Cal.1010(自動巻)/Cal.1011(自動巻)/Cal.1012(自動巻)/Cal.1481(自動巻)

Cal.1000系 デイデイト(自動巻)

リューズを1段引くと、日付の早送りが行えます。

リューズを2段引くと、針の操作(時刻合わせ)が行えます。

リューズを2段引いた状態で、リューズを12時側に回すと、曜日の早送りが行えます。

日付と時刻を合わせたら、リューズを元の位置に押し戻します。

◆操作方法が同じモデル一覧

Cal.1020(自動巻)/Cal.1021(自動巻)/Cal.1022(自動巻)

Cal.1000系 クロノグラフ(自動巻)

リューズを1段引いた状態で、リューズを6時側に回すと、曜日の早送りが行えます。

リューズを1段引いた状態で、リューズを12時側に回すと、日付の早送りが行えます。

リューズを2段引くと、針の操作(時刻合わせ)が行えます。

日付と時刻を合わせたら、リューズを元の位置に押し戻します。

◆操作方法が同じモデル一覧

Cal.1045(自動巻)/Cal.1040(自動巻)/Cal.1041(自動巻)


IWCの主なモデルの操作方法

Cal.8541(自動巻)

リューズを1段引くと、針の操作(時刻合わせ)が行えます。

針の操作で0時15分から23時45分の間を往復することで、日付の早送りが行えます。

日付と時刻を合わせたら、リューズを元の位置に押し戻します。

◆操作方法が同じモデル一覧

Cal.8541(自動巻)/Cal.8541B


セイコーの主なモデルの操作方法

56系/52系(自動巻)

リューズを1段引いた状態で、リューズを6時側に回すと、日付の早送りが行えます。

リューズを1段引いた状態で、リューズを12時側に回すと、曜日の早送りが行えます。

リューズを2段引くと、針の操作(時刻合わせ)が行えます。

日付と時刻を合わせたら、リューズを元の位置に押し戻します。

◆操作方法が同じモデル一覧

Cal.5206(自動巻)/Cal.5216(自動巻)/Cal.5601(自動巻)/Cal.5605(自動巻)/Cal.5606(自動巻)/Cal.5625(自動巻)/Cal.5626(自動巻)/Cal.5641(自動巻)/Cal.5645(自動巻)/Cal.5646(自動巻)

61系/62系(自動巻)

リューズを1段引いた状態で、リューズを12時側に回すと、日付の早送りが行えます。

リューズを2段引くと、針の操作(時刻合わせ)が行えます。

針の操作し、日付が変わる前後の午前2時から午後10時の間を往復することで、曜日の早送りが行えます。

日付と時刻を合わせたら、リューズを元の位置に押し戻します。

◆操作方法が同じモデル一覧

Cal.6105(自動巻)/Cal.6145(自動巻)/Cal.6146(自動巻)/Cal.6155(自動巻)/Cal.6156(自動巻)/Cal.6185(自動巻)/Cal.6186(自動巻)/Cal.6245(自動巻)/Cal.6246(自動巻)

150mダイバー 2ndモデル 後期(自動巻)

リューズを2段引くと、針の操作(時刻合わせ)が行えます。

リューズを1段引き、リューズを12時側に回すと、日付の早送りが行えます。

日付と時刻を合わせたら、リューズを元の位置に押し戻します。

リューズを戻した後に、軽く左右に動かすことで、ケース側にある小さい突起にリューズの溝が噛み合い、簡易的なリューズロックが機能します。

◆操作方法が同じモデル一覧

Cal.6105(自動巻)

150mダイバー 3rdモデル(自動巻)

リューズを6時方向に回し、ねじ込みを緩めて、ロックを解除します。

リューズを2段引くと、針の操作(時刻合わせ)が行えます。

リューズを1段引き、リューズを12時側に回すと、日付の早送りが行えます。

リューズを1段引き、リューズを6時側に回すと、曜日の早送りが行えます。

日付と時刻を合わせたら、リューズをそっと押し込みながら12時方向にねじ込み、ロックします。

◆操作方法が同じモデル一覧

Cal.6306(自動巻)

6138系クロノグラフ(自動巻)

リューズを2段引くと、針の操作(時刻合わせ)が行えます。

リューズを1段引いた状態で、リューズを12時側に回すと、日付の早送りが行えます。

リューズを1段引いた状態で、リューズを6時側に回すと、曜日の早送りが行えます。

日付と時刻を合わせたら、リューズを元の位置に押し戻します。

◆操作方法が同じモデル一覧

Cal.6138(自動巻)

6139系クロノグラフ(自動巻)

リューズを回すと、インナーベゼルの操作が行えます。

リューズを1段引くと、針の操作(時刻合わせ)が行えます。

リューズを軽く押し込むと、日付の早送りが行えます。

リューズを強く押し込むと、曜日の早送りが行えます。

日付と時刻を合わせたら、リューズを元の位置に押し戻します。

(※手巻き機能は元々搭載されていません。)

◆操作方法が同じモデル一覧

Cal.6139(自動巻)

7015系クロノグラフ(自動巻)

リューズを回すとインナーベゼルの操作が行えます。

リューズを2段引くと、針の操作(時刻合わせ)が行えます。

リューズを1段引いた状態で、リューズを6時側に回すと、日付の早送りが行えます。

リューズを軽く押し込むと、曜日の早送りが行えます。

日付と時刻を合わせたら、リューズを元の位置に押し戻します。

◆操作方法が同じモデル一覧

Cal.7015(自動巻)/Cal.7016(自動巻)/Cal.7017(自動巻)/Cal.7018(自動巻)


操作における注意点について

・カレンダー操作禁止時間帯について

「操作禁止時間」とは、簡単に言うと「カレンダー(日付)の早送りをしてはいけない時間」のことです。

カレンダー操作の禁止時間は、メーカーやモデルによって異なりますが、ほとんどの腕時計で「午後8時から午前4時までの8時間が操作禁止時間」と定められています。

多くの腕時計では、午後8時から午前4時にかけてカレンダーディスクと日送り車(早送りをするための歯車)が噛み合っており、この時間帯にリューズを引いて強制的に日付を調整しようとすると、日送り車の爪やプレートの突起が折れたり、他の歯車との接触などの理由により、最悪の場合、時計が動かなくなる恐れがあります。

・リューズの戻し忘れ

時刻合わせや日付の早送りを行った後は、引き出したリューズを必ず元の位置に戻してください(ねじ込み式のリューズは、最後までしっかりねじ込んで下さい)。

引き出したままの状態では、リューズと時計の間に隙間が生じ、防水面でのトラブルや衝撃によりリューズ(巻き真)が折れてしまうことがあります。

戻し忘れにはくれぐれもご注意ください。


まとめ

以上のことを踏まえ、改めて時刻合わせと日付の早送りの順番をご説明すると、

① リューズを時刻合わせの段に引き出す。

② 針を6時前後(カレンダーの操作禁止時間帯を避ける)に移動する。

③ 日付・曜日を「前日」に合わせる。

④ 時刻合わせで午前0時以降まで進ませ、日付と曜日が「当日」に切り替わったのを確認する。

⑤ 現在時刻に合わせ、引き出したリューズを戻す。

上記のステップで操作を行うことで、午前と午後を間違えずに、現在の時刻と日付に合わせることができます。

ヴィンテージ時計は現行品に比べ、少し変わった操作方法が必要なモデルも多く、全てを網羅するのは難しい反面、それこそがヴィンテージ時計の魅力だったりもします。

他にも、トリプルカレンダー、ポインターデイト、短針操作型、アラーム時計など、そのモデルならではの操作方法が存在しますので、また別の機会にご説明させていただきます。

時計の使い方で分からないことがございましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。

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